作詞とゆでたまご

作者:灰戸
「はい、梨子ちゃん、これ」

 お昼休み、机を並べお弁当を広げる梨子に千歌は、"見たらみかんの刑"と書かれたノートを手渡した。千歌の作詞ノートだ。

「あれ、作詞はまだって言ってなかったっけ」

「ふっふーん、それがまさにさっきできたばっかりなんだよ! できたてほやほやだよ!」

「千歌ちゃん、まさかさっきの授業で珍しく真剣になにか書いてると思ったら……」

「でもこれで梨子ちゃんも曲がかけるでしょ?」

 ジト目で千歌を見る梨子。しかしその様子をものともしない千歌は真面目な表情だ。

「そうだけど……。でも、ちゃんと授業は受けなきゃだめだよ? 留年しても助けてあげられないんだからね」

「大丈夫大丈夫、Aqoursにはなんて言ったって鞠莉ちゃんがいるんだから、鞠莉ちゃんにお願いして……」

「そういう問題じゃないからー! それじゃ千歌ちゃん自身のためにならないし、鞠莉ちゃんに頼ってばかりじゃなくて私たち自身でもがんばっていかなきゃ。頼ってばっかりじゃ、自分のためにならないよ」

「あうぅ……ごめん」

 ガクッと肩を落とししょげる千歌。ちょっと言い過ぎたかな、とその様子を見て梨子もきゅっと心が痛む。

 手元に広がるのは、トマトやレタス半分にしたゆでたまごの入った彩り豊かな梨子のお弁当とご飯が多めのシンプルな千歌のお弁当。

 それを見て梨子は半分にしたゆでたまごを千歌のお弁当の上に乗せる。

「はい、千歌ちゃん。このゆでたまご、あげるよ」

「え、いいの?」

「うん、私も作詞早くーって急かしちゃったし、それに作詞も無事できたんだし、そのお詫びとお礼……になるかわからないけど」

「ありがとう、梨子ちゃん。ねえねえ、それじゃあ、あーん」

 パアッと明るくなり、嬉しそうな千歌は大きく口を開ける。

 瞬間戸惑った梨子もその表情を見てふふっと口元をほころばせた。

 そしてそのまま、「はい、あーん」と言いながら優しい表情でゆでたまごを千歌の口元へと運んだ。

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